【表書き大全】個別指導でも評価される“伝わる記録”の書き方と全パターン解説

SOAPはなんとなく書けるようになってきた。
でも…表書きって、どう書けばいいのか迷うことありませんか?
個別指導や実習、外部のチェックが入る場面では、SOAPよりも先に“表書き”が読まれます。
それは、薬剤師が患者さんをどう理解し、
どんな視点で関わっているか――
その「姿勢」が、表書きににじみ出るからです。
とはいえ、日々の業務の中では
- 何を書いていいか分からない
- 初期設定のテンプレのままになっている
- 患者さんの生活背景まで反映できていない
そんな状態になってしまうことも多いのではないでしょうか。
この記事では、そんな“なんとなくの表書き”から脱却して評価される・伝わる記録にするための書き方のコツを、カテゴリ別にわかりやすく整理しました。
表書きが変わると、薬歴が変わる。
薬歴が変わると、指導が変わる。
指導が変わると、患者との関係が変わる。
まずは「表書き」から整えてみませんか?
表書きとは?なぜ必要なのか
薬歴全体の“見出し”としての役割を果たすため
薬歴は、患者さんの治療の歩みが記録された1冊の「本」です。
そして、その本の主役はもちろん――患者さん自身です。
本を読むとき、見出しがなかったらどうなるでしょう?
どんな内容が書かれているかパッとわかりませんし、あとから読み返すときに必要なページを見つけるのも大変です。
それと同じで、薬歴にも“見出し”が必要です。
その見出しの役割を果たすのが「表書き」です。
表書きがあれば、患者さんの治療歴や特性が一目で把握できます。
これにより、患者ごとの適切な服薬指導や配慮がしやすくなります。
SOAPでは残しきれない患者情報を伝えるため
薬歴を指導していると、
「SOAPに書いたんだから、表書きに書かなくてもいいですよね?」
そんな質問を受けることがあります。
気持ちはよくわかりますが、これは大きな誤解です。
たしかにSOAPは重要です。
でも、SOAPは長期的に見ると一時的な記録でしかありません。
実際に業務で確認するのは直近の数回分程度ではないでしょうか。
一方で表書きは、薬歴を開いたときに一番初めに目に入る情報です。
たとえ数年前に記録した内容であっても、
ここに記載しておけば、いつでもすぐに確認できます。
つまり表書きは、SOAPでは拾いきれない
「継続的に把握すべき患者情報」を見える化するためのツールなのです。
表書きの質・継続性が個別指導の際に評価される
表書きは、薬歴を印刷したときに最初に表示される項目です。
そのため、個別指導の際に監査官が最初に目を通すのも表書きです。
もしこの表書きが「高血圧・糖尿病」だけだったら――
監査官は、患者さんの背景を正しく理解できるでしょうか?
その結果、SOAPにどれだけ具体的な指導内容が記載されていても、
「この指導がなぜ必要だったのか」が伝わらなくなる可能性があります。
せっかく患者さんのためを思って行った服薬指導も、忙しい業務の中で丁寧に書いた薬歴も、評価されなければ悔しいだけです。
だからこそ、表書きには患者さんの背景をきちんと反映し、継続的に見直し・更新していく意識が必要なのです。
表書きに記載すべき情報カテゴリ一覧
以下に表書きに記載すべきカテゴリ一例と記載のポイントを示します。
一部あえて薬品分類を記載しましたが、実際には具体的にその薬品名を記載してください。
(※各項目の詳しい記載方法は今後個別記事を作成し、リンク予定です)
カテゴリ | 記載例 | 記載のポイント |
---|---|---|
治療歴・既往歴 | 既往歴:心不全。入院歴2回、初回入院時からトルバプタン開始(2025.4.1) | 病名だけでなく経過や現在の 課題を入れる |
副作用歴・アレルギー | ARBで発疹歴あり。休薬後、症状改善の後Ca拮抗薬に切替(2024.1.7) | 症状とその際の対応・ 再発リスクも含めて記録 |
生活背景・服薬支援 | 服薬管理:娘が一包化された薬を服薬時点に本人へ交付している。 | 服薬支援者・管理体制を明記 |
社会的背景 | 要介護2、デイサービス利用 (月曜、水曜、金曜の9-16時) | 生活動線・他職種支援状況など |
患者体質 (フレイル・認知リスクなど) | 歩行器使用。視力低下によりラベル確認困難のため配慮必要。 | 配慮が必要なリスクは要記録 |
コンプライアンス・残薬傾向 | 抗生剤は飲まないほうがいいと思い込んでおり、自己調整されている経歴あり。 | 対象薬と行動背景を明確に記載 |
表書き記載のNG例と改善例
「ちゃんと書いたのに、わかりにくいと言われた…」
その表書き、もしかすると伝わらない表書きになっているかもしれません。
このセクションでは、よくあるNGパターンとその改善例を比較しながら、
「なぜそれではダメなのか」
「どう書き直せば伝わるのか」
を一緒に整理していきましょう。
例①:既往歴の書き方
❌️ 既往歴:糖尿病
↓ ↓ ↓
⭕️ 既往歴:2型糖尿病(母・祖母が治療中。家族歴あり)
🔍 なぜNGなのか?
「糖尿病」とだけ書かれていても、
その患者さんがどういう背景で治療しているのか・どんな問題を抱えているのかが見えてきません。
これでは指導の重点もリスクも何も分からない状態です。
たとえば、家族歴がある場合は生活習慣の指導が必要な可能性が高く、2型と明記することで他の代謝異常のリスクや治療戦略も見えてきます。
単なる病名の羅列ではなく、“解釈と背景”を添えることが重要です。
✍ 改善のポイント
- 疾患の種類(例:2型糖尿病)まで書く
- 家族歴など、リスクや教育ニーズが見える情報を添える
- 単語ではなく“文”で記載する意識を持つ
例2:調剤情報
❌️ 一包化必要
↓ ↓ ↓
⭕️ 視力低下によりPTPでは誤飲リスクあり。一包化による誤飲対策必要。
🔍 なぜNGなのか?
「一包化必要」とだけ書かれても、
“なぜ必要なのか”がわからないため、
他職種や次回以降の薬剤師が読んだときに情報が伝わりません。
また、理由が明記されていない一包化は保険上の問題になることもあり、
個別指導で何度も指摘対象になっています。
情報を残す際には「判断の根拠」を残すことが重要です。
✍ 改善のポイント
- 処方や支援の根拠となる“理由”を明記
- 「〜のため」「〜により」など因果関係を入れる
- フレーズではなく“短い文章”で構成する
表書きは「情報」だけでなく「意図」を伝える場
表書きで伝えるべきは、
患者さんの「情報」そのものではなく――
薬剤師として何に気づき、何を考え、何を配慮しているかという「意図」です。
だからこそ、「糖尿病」「一包化」などの単語だけでは伝わりません。
読み手が次の一手を打てるように、
一文で“背景”と“意味”が見える表書きを目指しましょう。
さらにNGパターンや、カテゴリ別の記載例が知りたい方は、
▶ 【カテゴリ別記載ガイド】表書きで使える文例まとめ(準備中)
もあわせてご覧ください!
まとめ:伝わる表書きは、考える薬歴への第一歩
表書きは、単なる補足情報ではありません。
薬歴全体の“見出し”として、
患者さんの背景や治療歴、そして薬剤師の視点を伝える重要なパートです。
「ただの病名」「一言コメント」では、指導内容の意図は伝わりません。
表書きを見たときに、患者さんの情報が、背景を含めて把握できるように――
要点が伝わる一文を意識しましょう。
今回ご紹介したカテゴリや改善例をヒントに、
自分の薬歴を見直してみると、
「これ、他の人に伝わるかな?」という視点が自然と身につくはずです。
伝わる薬歴は、表書きから始まります。
ぜひ、次の薬歴記載から一緒に実践していきましょう。
次に読みたいシリーズ記事(作成中)
• ▶ 【表書き大全|治療歴編】病名だけじゃ伝わらない!記録のコツと事例
• ▶ 【表書き大全|生活背景編】服薬支援につながる“背景情報”の整理術
• ▶ 【SOAP記載編】表書きと連動するA・Pの組み立て方
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