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【新人薬剤師向け】薬歴ってなに?目的・意味・現場での役割をやさしく解説

umaingen

「薬歴って、何のために書いてるんだろう?」
「とりあえずSOAPを埋めたけど、これでいいのかな……」

そんなふうに感じたことはありませんか?

この記事では、新人〜若手薬剤師の方に向けて、
薬歴の「本来の目的」と「現場における役割」を体系的に解説します。

薬歴の目的は2つの視点でとらえる

薬歴には「医療的な役割」と「制度的な役割」の2つがあります。

🔹 医療的な目的

  • 服薬状況や副作用の有無を記録し、次回以降に活かす
  • 患者の変化を可視化し、他職種や将来の自分と情報共有する

🔹 法的・算定的な目的

  • 服薬指導料・管理指導料の算定根拠となる
  • 記録がなければ、“指導した事実”と認められない
  • 個別指導や監査において、薬歴は重要な評価対象になる

薬歴は「記録作業」ではなく、
「患者の安全と治療の質」を守るための医療インフラです。

薬歴の構造:表書きとSOAPの違い

薬歴は、大きく分けて「表書き」と「SOAP記載」の2部構成です。

表書き(患者特記事項)

患者の生活背景、行動、治療歴などを記載。
主に長期的に保管すべき情報を書き留めます。

服薬指導時の会話や気づきを時系列順に記載し、患者情報を蓄積していくことが重要です。数年先に見直しても患者がどのような経緯で治療を行ってきたか判断できるような記載が求められます。


医療的内容:

  • 既往歴、入院歴などの治療歴
  • 有害事象の評価および対策内容
  • 同居者、薬管理者、保管状況などの患者背景

算定的内容:

  • 一包化、半錠作成工程などの調剤記録
  • 添付文書より逸脱した内容の疑義照会記録(実施日時を含む)
  • 漫然投与を疑う薬剤の治療評価

表書きの記載事項は別記事にまとめますので詳細はそちらも参考ください。

表書きは“情報の貯金箱”のような役割。
日頃からコツコツと患者情報を貯蓄していきましょう。

SOAP記載(構造化された情報)

各項目の意味は以下のとおりです;

  • S(Subjective):主観情報
  • O(Objective):客観情報
  • A(Assessment):評価
  • P(Plan):計画・実施内容

SとOに記載した内容を基に薬剤師の評価を行い、要点をAにまとめます。
Aにまとめた内容を踏まえて薬剤師として行った内容をPに記載していきます。

特にAとPは薬剤師としての思考と判断が現れる部分なので、特に丁寧な記載が必要です。薬剤師としての行いを他職種が読んでも理解できる記載を心がけましょう。

「SOAPだけ書いて終わり」はNG。
薬歴全体で患者像を明確に伝える意識が求められます。

薬歴に記載すべき基本要素

記載内容を体系的に整理しておくことで、質の高い薬歴が書けます。
初回処方か継続か、患者の理解度・服薬状況・生活背景、処方意図の情報を体系立てて記載する必要があります。

薬歴のどこに何を記載するか決めておかないと、後から検索できず業務効率が低下します。

効率が低下すると服薬指導にかける時間が減り、患者に十分な対応ができなくなります。記載ルールは店舗で統一しておきましょう。

薬歴は「誰のため」に書くのか?

薬歴は、患者だけでなく多くの関係者のための記録でもあります。

  • 薬剤師(次回指導の効率化)
  • 医師・看護師などの他職種(情報連携)
  • 行政機関・監査担当者(評価・査察)

また、有事が起きた際には薬剤師の対応が適切だったかを薬歴から判断されます。
自身の身を守るためにも薬歴には実施内容を丁寧に記載しましょう。

薬歴は「共有」するために書くもの。
誰が見ても内容がわかるように、簡潔かつ明確に記載しましょう。

まとめ:薬歴の意義とは

薬歴は治療の継続性を支える「業務基盤」です。また、薬剤師としての思考と判断を言語化し、残す「唯一の公的文書」となります。

どんな薬歴を書くかは、あなたが“現場で何を見て、どう考えたか”で決まります。
患者のために、そして自身のためにも普段から患者のサインを見逃さないよう意識しましょう。

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記事を書いた人
おはな
おはな
現場の“モヤっと”を言語化する人
薬剤師歴9年。調剤薬局や派遣先で多様な患者さんと向き合ってきました。 また、薬歴記載に関する社内活動も経験しています。 「薬歴が書けない」「時間がない」「成長実感がない」—— そんな現場の“モヤモヤ”を放置せず、向き合い、言葉にし、工夫してきた経験をこのブログでシェアしています。 テーマは、薬歴記載の視点、業務効率化、そして現場で役立つビジネスの知恵。 私自身が「現場経験」「個別指導」「資格取得」「講師活動」を通じて得た学びをもとに、 あなたの毎日に、ひとつでも“使える視点”を届けられたら嬉しいです。
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